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2013年1月27日 (日)

橋下徹氏の出自で考える『部落民』という定義の曖昧さ

弁護士でテレビタレントを勤め、大阪府知事、大阪市長など政界で活躍している橋下徹氏。彼はたびたび出自を取り上げられます。Wikipediaによれば、どうも彼の父親が被差別部落出身者であることは間違いないようです。また、被差別部落にある府営住宅に居住歴があります。しかし、橋下徹氏はたびたび自身を「同和ではない」と発言しています。

筆者は、この問題が、現代における部落民という認識の曖昧さ、困難さを代表していると感じています。

筆者の両親は、両者とも被差別部落の出身です。よって、筆者は部落民であると言えます。
両親が部落民である場合、ほぼ確実にその子どもは部落民であると判断されるのです。これについては誰も異論がないかと思います。

では、片方の親が部落民だった場合はどうするのでしょうか?
日本の伝統的な家庭では、父親が一家の長であり、父親の家系が子の家系です。ただし女性しか子どものいない家庭もありますから、婿入りという制度もあります。
ですから、一般的には、被差別部落の家庭に嫁入りもしくは婿入りした場合、子どもは部落民だと判断されます。

その逆、つまり被差別部落民が一般の家庭に嫁入りないし婿入りした場合はどうでしょうか。
結論から言うと、大抵の場合、一般家庭に被差別部落民が嫁入りしても、その家庭は一般家庭のままです。婿入りの例は、筆者は聞いたことがないので判断しかねますが・・・
ただし、嫁入りしても舅や姑から差別を受けたり、子どもが親戚から「半分部落の血が流れている」などと中傷される例が後を絶たちません。

このように、被差別部落民であるかどうかを判断する際には家長制度が非常に重要な要素になっています。

では、橋下徹氏のような場合はどうすべきでしょうか。
Wikipediaなど複数の情報によれば、彼の父親は被差別部落出身ですが、彼と父親はずっと別居状態で、橋下徹氏には父親の記憶がほとんどないとされています。

家長制度の原理から判断すれば、家長である父親が被差別部落出身ですから、橋下徹氏は部落民だということになります。
しかし、橋下徹氏の両親はずっと別居状態であり、このことから橋下徹氏は、自分は父親と関係がないとし、「同和ではない」と主張しています。

これが一番の問題なのです。家長制度が実質的に機能しなくなった日本では、本人が「同和でない」と言えば、誰もそれに反論できないのです。

そもそも、部落民という定義は曖昧なのです。かつては被差別部落に居住し、結婚相手は必ず部落民どうしでした。ですから、わざわざ被差別部落民の定義を作る必要はありませんでした。近代、現代と時が進むにつれて、被差別部落民と被差別部落外での結婚が増えました。同時に、かつては余程の事件がなければ起こらなかった離婚も、当然のように行われ、被差別部落民を定義することは今、極めて難しくなっています。

今のところ、被差別部落民の定義を作成する動きはありません。定義ができるのは、部落差別の解消を目的とする部落解放同盟くらいですが、仮にやるとしても反対が起こることは必至でしょう。

では、一般的な観念から考察をするとどうなるでしょうか。
筆者のように、両親とも被差別部落民の人間が、「同和ではない」と言っても、全然説得力がありませんし、認められないでしょう。しかし橋下徹氏はどうでしょうか?父親は部落民、母親は部落民ではない。長期別居、本人は部落民であることを否定。現代の社会的観念においては、誰も確かな判断はできないでしょう。

こういった例の場合、判断は個人的価値観に委ねられます。
一寸前に、大阪市桜宮高校の生徒が、橋下徹氏に対して「部落民がいきんな」と発言しました。この生徒は、橋下徹氏を部落民だと判断しています。つまり、自身が否定しようが、部落の子は部落という価値観を持っているのです。このような価値観は、差別感情のいまだ消えない人々に多いと思われます。この生徒の価値観が一般的な考え方とはいえませんが、この発言は、部落差別の考え方が未だ根強く残っていることを示唆しています。

長々といろいろ書きましたが、橋下徹氏の出自について、筆者の結論は次のとおりです。
現代の、部落民という定義が曖昧な状態では、橋下徹氏を部落民だと結論づけることはできません。

これは深刻な問題です。「とにかく差別やめろ」という左翼運動をずっと引っ張ってきていながら、現状には皆目を閉じているのです。一度、部落民のアイデンティティを真剣に検討しなければ、被差別部落問題の解決は今後も困難でしょう。









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